2008年05月23日

ゆるやかな牢獄

起きていた時には朝だったのに
気が付いたら夜になっていた。
その合間にはあいつが来ていて
オレを好き勝手に弄んでいた。

ベッドから起き上がるために、腕に絡まったロープを解いた。
逃げ出す訳はないのに、よく、こんなコトをされる。
どこかに繋ぎ止めていないのに、両手の自由を奪われただけで
簡単に、感じてしまうオレもオレなんだけど…

「…あの…バカ。…固結びじゃんか…」

なかなか解けない結び目に苦戦している時に
あいつが寝室に戻ってきた。
自分だけシャワーを使って、何食わぬ顔でオレを見ると、馬鹿にしたように鼻で笑った。

「何してるんだ?」
「…見ればわかるだろ。…これ、取ってよ」
「どうせまたすぐ結わうんだ。このままでもいいだろう?」
「腕、痛いんだよ。取ってよ」

両腕を差し出して睨むオレに、あいつは近寄って
乱暴にその腕をベッドに押し付けた。
オレの体は半身ひねる様に、ベッドにうつぶせになる。
そして、その無防備な背中に、あいつは、唇を這わせてきた。

「……やっ…」

一瞬で痺れが走る。
すっかり冷めていたはずの身体が、ザワザワと音を立てた。
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2008年05月25日

うれしいお土産

久しぶりに一ノ宮さんが部屋に来た。
オレの好きな武松寿司の折り詰めを持って。

「イツキくんの好きな厚焼き玉子、たくさん入れて貰ったんですよ」
「一ノ宮さん!!!!」

ベッドから這い出たオレは下着にシャツだけの格好だったけど、一ノ宮さんには気を遣わなくていいし
居間のテーブルの脇にぺたりと座ると、熱いお茶まで用意してくれた。

「少し…、痩せましたね?」
「そう?」
「最近、閉じこもりきりなんでしょう。身体に悪いですよ?」
「そんなの、マサヤに言ってよ。オレのせいじゃないよ」

ふんわりと甘い玉子焼きを頬張ると、急にお腹が空いてきた。
…その前に食べた食事が何だったのか思い出そうとしたけど無理だった。

「社長も…あなたも、加減が出来ない人ですからね」
「…オレは節制してるよ。…あいつが滅茶苦茶なだけだよ」
「どっちもどっちです」

呆れたように溜息をつく一ノ宮さんを横目に、オレはガツガツ寿司を食べていた。


朝も夜も解らない部屋で、一日中セックスして過ごしていて
節制もクソもないか
堕落って、こういう状態なんだと思うけど、それから抜け出す度胸もない。
このまま、腐っていくなら、それもいいのかもと思う。


最後に取って置いた中トロを食べ終わった時に
マサヤが部屋に帰って来た。

「じゃあ、私はこれで失礼します」
「見て行かないのか?」
「ご遠慮します。じゃあね、イツキくん」
「ん、ありがとう。一ノ宮さん」

入れ違いに一ノ宮さんが部屋を出て行った。
重たい扉が閉まると、そこはまた、オレとマサヤだけの世界になった。
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からっぽ

煙草とぬるい汗と精液の匂いしかしない部屋に
ギシギシとベッドが軋む音が響く。
うつぶせに寝かされたイツキの身体は壊れた玩具のようで
背中の男が動く度に、短い悲鳴を上げた。

「嫌」という言葉も「助けて」という言葉も
もうなんの意味も持たない事は解っていたけど
つい、口の端から零れてしまって
男を喜ばせていた。

「…待って、お願い。待って…、待って…」

どうにかなってしまうのを少しだけでも遅らせたくて
イツキの手がシーツの上を滑る。
けれど、何も掴むことは出来ず、からっぽのまま握られる。
その手に杭を打ち込むように

マサヤの手が重ねられた。


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2008年06月05日

迷宮

「別に俺は強制している訳じゃない。この部屋から出るなとは言ってないだろう?」
「でも、マサヤが来た時にオレが部屋にいなかったら…マサヤ、無茶苦茶怒るじゃんか…」
「…そうか?」

そう言ってマサヤは鼻で笑って、手にしていた酒のグラスを一気に煽った。
昼でも夜でも気が向いた時に部屋に立ち寄って、そのどの時間にもオレがいなくちゃいけないなら
やっぱりオレは、もう、部屋から出ることなんて出来ない。

いつだったか…ほんの少しコンビニに行っている時に、マサヤが来ていて
オレが部屋に帰って来たと同時に、殴られた。
理由も告げられずに廊下に引きずり倒されて
そのままそこで、おかしくなるまで、ファックされた。
あいつがおかしいのなんて、いつもの事だけど
それに付き合うオレも…相当おかしいと思うけど。

締め切った部屋の中で、一日中セックスしてたら
何がちゃんとしている事で、何がおかしな事なのか、解らなくなってきた。
まるで、迷子にでもなった気分だ。

「出掛けたいなら、出掛ければいい。勝手にしろ」
「あ、そう」

勝手にすればいいって、それが一番困る。
いっそ手も足も繋ぎ止められて、余計な事、考える隙もないくらい…全部がマサヤの物になっちゃえばいいのに。


2杯目の酒を飲み干して、マサヤがベッドに戻ってきた。
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2008年06月10日

潮時

マサヤが部屋に来なくなって、もう10日になる。
今までだってそんなコトはしょっちゅうあったけど、ここ最近は珍しくて
オレは怖くなったり不安になったり…落ち着かない。

これじゃあ
まるっきにマサヤに溺れきってる。
惚れて、見境がなくなってるみたいじゃんか。

馬鹿みたいに固執しているのは解っていたけど
頭が働かなくて、ちゃんとした答えを探す気にもなれなくなっていた。
最後のカップラーメンを食べて
もう、このまま死んじゃってもいいと思ったら
涙が零れた。






「…有り得ないし」


起き上がって、シャワーを浴びて、服に着替えた。
部屋中の窓を開けて、汚れたシーツをゴミ箱に捨てた。
ケータイを手に取って…それでもしばらく…着信が無いか待っていたけど…

パタリと閉じて、ポケットに押し込む。

久しぶりに玄関を出て、マンションの外に出た。

外の日差しがまぶし過ぎて、オレは立ち眩みしそうになっていた。


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2008年06月19日

超久々佐野っち

玄関を入ってすぐ脇にある台所の、流しに上半身を突っ伏して
後ろから、激しく突き上げられて、イツキは艶声を上げる。
ソコで、モノの大きさや勢いを測れるようになるのも…何だと思うのだが
マサヤとは違う、それ、に、イツキはつい、うっとりと甘い吐息を漏らした。

するつもりでは無かったのだけど、久しぶりに外に出たついでに、佐野の家に寄って
玄関で立ち話を少しして、流しでお茶を一杯貰って
気が付いたら、始まっていた。
まだ、キスもしていなかったのにと思ったが…まあ、それは後でもいいことで。

「…あっ、そこ……」
「ここ?ここか?イツキ…」
「ん…、そこ…いい…。そこ…、佐野っちぃ……」

調子に乗った佐野はイツキの腰を両側から掴んで、前後左右にとぐちゃぐちゃに動かす。
イツキはバランスを崩して、すでに流しの中に身体を落としそうになっていた。
慌てて支えようとした手が、宙を切って
そこらのグラスや鍋を、床に落としていた。

「…イツキ、俺…、お前に会いたかった…、ずっと…。でも…社長がお前…離さねぇし…、もう…駄目なのかもって…、でも…俺……」
「佐野っち…、奥…その奥…擦って。もっと…」
「イツキ、俺……」
「あ……、あああっ……ひっ」

膨張した佐野の肉塊が、イツキの一番敏感な場所に届いて、イツキは一際大きな声を上げた。
流しの上にある窓が少し開いているのが目の端に映っていたが
もう、そんな事を気にしている余裕は
2人には無かった。

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2008年06月25日

そんなこと解ってる

台所での情事が終わって、やっと部屋の中ほどまで進み
布団の上で、次を始めるまでの間
抱き締めあって、キスなどを交わす。
裸のまま、佐野はイツキを胸に抱いて、片手で煙草を吹かしていた。

「…こうしてんのも…久しぶりだよな…」
「うん。……佐野っち…、彼女、出来たんでしょ?」
「はー?そんなのいねぇよ。彼女じゃねぇし」

佐野は少し慌てた風に、紫煙を2、3回、短めに吐き出した。

「お前だって最近は社長とイイ感じだったじゃねぇか。
…ま、それに越したことは無いんだけどな…」
「…気紛れなだけだよ。あいつ、勝手だから…」
「でも、仕事は無いんだろ?良かったじゃんか」
「そう、だけど…」


確かに、以前のように不特定多数の男とセックスをする「仕事」は減ったし
その分を埋めるように、マサヤはイツキを独占して、その身体を自由に扱っていたけど
けれど、それが、イツキの幸せに直結するとは限らなくて

では、どうすれば幸福を感じるのかは、解らなくて。


自分が、どうしたいのかなどと考えることすら久しくしていなかったイツキは
目の前にいる男とヤルことで、とりあえずの自分を保っていた。
「なあ、イツキ。…お前さ、これから…どうするのさ?」
そんな当たり前の問いに返事をすることも出来なくて
とりあえず目を閉じて、眠気の波に身を任せることにした。
posted by 白黒ぼたん at 00:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2008年07月12日

どこにも


『……から、……で……よ、ダメなんだってよっ』

佐野っちのアパートで一晩中セックスした、その次の日の夕方。
浅い眠りから覚めると佐野っちはいなくて、代わりに外の廊下から声が聞こえた。
…誰かと、電話で話している声だった。

『とにかく今日はダメなんだよ。ちげーよ、浮気じゃなくって……バカ、違うって!』

言い争っているような声色で捲くし立てて、しばらくして、佐野っちが部屋に戻ってきた。
オレと目が合うと慌ててケータイをポケットに突っ込んで、誤魔化すようにハハハと笑う。
それからオレの隣に座って、オレの肩を抱いて、キスを一つする。

その時
オレはここにいちゃいけないんだと…思った。
どこにも、オレの居場所はないんだ。

そう気付いたら、もう、佐野っちの部屋にいることは出来なかった。




部屋に帰る時には少しドキドキした。
マサヤが来ていて…怒ってるんじゃないかと思って。
だけど、それは杞憂で
マサヤが部屋に寄った気配も無かった。

「…なんだよ、あいつ…来る時は毎日来るくせに…」

自分でも…ホッとしたのか、残念なのか解らない言葉を呟いて
とりあえず、風呂に入った。




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2008年07月29日

真夜中の情事

突然だった。


真夜中、すっかり寝入っていて…ドアが開く音にも気付かなかった。
ゆるやかな愛撫と身体に広がっていく快楽に
無条件に声を上げて、その声で目が覚めた。

「…マサヤ?」

何日ぶり?とか、挨拶もナシでフェラかよ?
とか思ったけど…そんな事を問いただすほど、俺もバカじゃ無かった。

「…ガッツクなよ、イツキ。そんなに飢えてたのか?」

と、奴は言う。
がっついてるのはアンタじゃないか…。
俺はただ…脚を広げて、腰を浮かせて、少しの刺激でも漏らさないようにアンタの舌の動きを…追っかけてるだけだよ。

くるりと身体の位置が入れ替わって、マサヤが下になった。
目の前にある…それが欲しくて
俺はカチャカチャとマサヤのズボンのベルトを外す。
服の上から触れるだけで、どんなに勢いがあるかわかるソレを取り出して、口の中におさめる。
喉の奥に触って、苦しくなるくらいが、丁度良くて

「……あ、ひっっ」
「イツキ。ケツ、開きすぎだ。丸見えだぜ?」
「指…そんなに…掻き回したら…ダメ、すぐ…出ちゃうよ…っ」

シックスナインの体勢で、マサヤは俺のアナルを弄りだす。
躊躇無く指を突っ込んで、広げて、舌を捩じ込んで
くちゃくちゃと音を立てて、舐めまわす。
俺はマサヤのを咥えていたのに、奉仕する間もなく口から外してしまって
愛しいものに頬ずりするように、それを顔に擦り付けて
もっと滅茶苦茶にして欲しいと…喚く。


「…マサヤ…、して、して。
…早くして…、俺、もう……我慢できないよ……
これ…中に入れて、入れて…マサヤ…
マサヤ……っ」


みっともなく叫んでしまったのは

多分…

半分、寝ぼけてたせいだと思うんだけど。

posted by 白黒ぼたん at 01:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2008年11月10日

久しぶりに

突然、後ろから羽交い絞めにされて、路地に引き込まれ
その先の通りに停めてあった車に押し込められて
目隠しをされ、手足を縛られ、どこか、違う場所に連れて行かれて
犯された。

男達の声に聞き覚えは無かったし、あったとしても、誰が誰だか解らない状態で
とりあえず、抵抗を出来るだけはして、思いつく限りの罵声も浴びせたのだけど
すぐにその口も、タオルのようなもので塞がれてしまった。
服を脱がされて、標本か何かのように、手足をベッドに押さえつけられて
身体中に、冷たい、ぬるついた液体を垂らされる。
それで中心を擦られると、否応なしに快楽が湧き上がって
思わず腰を浮かせると、男達がせせら笑っているのが聞こえた。

脚を抱えあげられた頃には、もう何度か射精した後で、逆らう力など残っていなくて
ずるりと簡単に男のペニスを受け入れて、また、射精してしまう。
口の中に詰められたものを外されると、後に出てくるのは、ただのヨガリ声だけで
うっかり口を開けたままにしていたら、誰かがそこで小便をしたらしく、気管に入って、酷くむせてしまった。

目隠しはずっとされたままだったけど
時折、光るものが、カメラのフラッシュだという事は解った。
わざわざ脚を左右に広げられるのは
異物が突き刺さったままの肛門を映すためなのだろう。

実際、何人の男に犯されたのかは覚えていない。



気が付いた時には、連れ去られた路地裏に、寝っ転がっていた。
あちこちが痛んで、すぐに起き上がることは出来なかったけど
とりあえず、服は着ているようなので安心した。
上を見上げると、明るかった空が、すっかり暗くなっていた。



久しぶりに

涙が零れた。





おしまい


posted by 白黒ぼたん at 23:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記