2009年04月12日

アル中イツキ

リョーコさんは朝食を食べるとフラリと出かけて
夕方になると、またフラフラ帰って来て
馬鹿に明るく振舞って、晩ごはんを食べて、お風呂に入って寝る。
そんな日が何日か続いていた。

多分、毎日、自殺をしに出掛けているんだろうけど…まあ、いいか。

俺はと言えば、毎日、有り得ないくらいにゆっくりと過ごして、身体の傷も癒えて
フツーにご飯も食べて、少し、顔がふっくらして来た感じがする。
心も身体も落ち着いてくると、この先、どうなるんだろうと、不安が波のように襲ってくる。
マサヤから離れて、マサヤがいなくて、俺は1人で生きて行く事って出来るんだろうか…

「…マサヤがいないと…」

畳の部屋に寝っ転がって独りごつ。
窓の外から射す西日も、生ぬるい初夏の風も、平和過ぎて、俺には似合わない。

「…マサヤがいないと…、ビールも買えないじゃんか…」



一応、未成年の俺は、店でアルコールが買えないらしい。
それでもウチの近くのコンビニなら、なんとか誤魔化すことも出来たけど、こんな田舎の観光地にある小さな商店だと、それも出来ない。
リョーコさんも真面目ぶって、俺に酒を飲ませてくれない。…自分はこれから死のうとしてるくせに…

どうにもならないと解っていても、どうにも口寂しくて、旅館の外に出た。

駅前にある土産物屋の前にウロウロしてみる。

丁度、そこに、大学生風の男が数人、買い物に来る。

俺は駄目元で…、俺の代わりにビールを買ってくれないかと頼む。

「何?ビール飲みたいの? 駄目だなー、ガキのくせに。はっはっは…
まあいいけどさ、何だったら、俺らんトコで一緒に飲む? すぐ傍だぜ?」

その誘いに俺は「うん」と返事をして
つい、うっかり


仕事用の笑みまで浮かべてしまった。





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2009年04月14日

旅の恥はヤリ捨て?

「へー、イツキくん、16歳? コーコーセーなのー?
え?学校行ってないの? 何? オッス、オラ、ニートってやつ?」
「地元のコじゃないよねー。東京?東京から来てるの?俺らと一緒じゃん。
親と旅行?1人?嘘でしょー?」
「つか、ビール飲み過ぎだって!倒れちゃうよ。は?おかわり?」


都内の大学生だと言う3人は、休みを利用して、ここに来ているらしい。
親の持ち物だというリゾートマンションは温泉もスポーツ施設も充実していて、室内もホテル並みに綺麗だった。
買ってきたビールとお菓子をベッドの上に並べて、なんだかんだと他愛も無い話をする。
…俺の隣に座っている男の手が、さっきから俺の太ももに乗っているんだけど、まあそれは気が付かないフリをする。

久しぶりのビールが美味しい。
スプリングの利いたベッドも、気持ちいい。


「もう1本飲む?もう、泊まってけばいいじゃん。そこのソファ、ベッドになるしさ」
「それにしてもイツキくん。色、白いよねー。スポーツとかしてねーっって感じ?」
「茶髪は染めてるの?地毛?へー、サラサラだねー」


この数日、旅館でのんびり過ごせたのはいいけど、畳敷きに布団はどうも慣れなくて
夜中に何度も目が醒めてしまっていた。
真っ暗な部屋の中、隣の布団に寝ているのは、知り合ったばかりのリョーコさんで
ぼんやりとした頭の中で、これは誰なのか、とか、ここはどこなのか、とか考えたりする。
自分が誰なのか、とか。これからどうなっていくのか…とか。

急に怖くなって、また頭から布団を被って、身体を丸める。
こんな不安な夜は
酒に溺れるか、セックスに溺れるか、そのどちらか位しかする事はないのに。
そのどちらも出来なくて、泣きたくなるのを堪えて、電源の入らないケータイを握り締めていた。



「イツキくん。女の子みたいだよねー。言われるでしょ? 本当に男の子なのか、確かめてみたくなる…って」



アルコールが回って、ほどよくけだるい身体が、ベッドに押し倒された。


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2009年04月16日

乳首

1人の男は俺の両手首を掴んで、軽く、ベッドに押し付ける。
跳ね除けようと思えば出来るくらいの力だったけど、どうしようかと思っているうちに、唇が重なった。
ただ、合わせて、離れていくだけのキス。
それでも俺の上に乗っている男は、してやったりのご満悦な顔だった。

「イツキくん。酔っ払っちゃったかな?大丈夫だよ、ちょっと…する…だけだから」

ちょっとって何だよ?
中出ししない、とか、縛らない、とか?
ぼんやりと考える俺の、シャツのボタンを、男は一つ一つ外していく。
その横に、もう2人の男が覗き込むようにして
「お前、マジかよ?やめろよ」
なんて、言う。

「…だってよー。ほら、キレーな肌、してんじゃん。ちょっと…からかうだけ、だよ」
「キレーな肌っつても、男だぜ…」
「でもよー、乳首、ピンクで可愛いし…」

つっ

と、乳首を触られて、ピクンと身体が弾いた。
それを見て、男たちが意外な顔をしつつ…どこか、面白がっているのが解った。

もう一度、今度は指の腹で乳首をなぞられる。
くすぐったいだけの感触がもどかしくて、唇をくっと噛んで、顔を横に背けた。
男はそれで、俺が感じているんだと思ったらしくて
「ほら、見ろよ。こいつもまんざらでもなさそーだぜ?」
なんて、言う。


もっと


歯を立てて、キツク、噛んで欲しい。
血がでるまで、千切れてしまうまで、痛くして欲しい。
俺が止めってって言っても、泣いてお願いしても、冷たく笑って、
赤く腫れあがった乳首を指で弾いて、酷い言葉を吐いて欲しい。



「…や…ぁ………ん…」


そう呟いたのは、触られるのが嫌だからじゃなくて、焦れったいのが嫌だからだったけど
その言葉で、男達は余計に興奮したみたいで

今まで脇にいて「やめろよ」なんて言っていた奴が

キスをした男を押し退けて、俺の上に跨ってきた。


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2009年04月17日

茶髪とロン毛と眼鏡

最初、俺にキスをした茶髪の男を押し退けて、今度はロン毛の、体つきの大きな男が俺の上に乗った。
そのままずるずる身体を動かし、顔の上に跨るような格好になって、カチャカチャとズボンのベルトを外し始めた。
ボタンを外し、ジッパーを下ろすと、トランクスを少しズラして…それを、出す。
生温い空気と一緒に、もわっとした性の匂いが鼻に付いた。

「てめー、俺が先だろっ」
「いいじゃん。な、すぐ…すぐだからっ、なっ」

ベッドから下ろされた茶髪が、ロン毛に文句を言う。
その間、もう1人の眼鏡を掛けた男は成り行きに付いて行けない様子で、ソファに座って呆然とこっちを見ていた。

「すげ…、可愛い顔してっし…。色っぽいし…」

ロン毛はブツブツ呟きながら、俺の顔にちんこを擦り付ける。
あんまり滅茶苦茶に動くもんだから、仕方なく手を伸ばして、それを支える。
ちらりと舌を出して先っぽだけを舐めると、ロン毛は「う…あ…」と声を上げて、一層腰を振り始めた。

マジ?

このまま…
顔に出す気かよ?

目、とか、鼻の穴に射精されても嫌なので、タイミングを合わせて、すぽんと全部口に納める。
若いだけあって、太さも長さも…結構、良くて、喉の奥が苦しくなった。
あんまり一杯過ぎて、上手く舌を使うことが出来なかったけど、ロン毛は俺が苦しそうな顔をしているだけで、イイらしくて
変なうめき声を上げながらさらに激しく腰を振って、俺の喉の一番奥に、生臭い汁を吐き出した。




「…っ…けほっ……はっ………ふあ……っっ」

少し気管に入って、咳き込む。
枕に頭を突っ伏して、ゲホゲホやっていたら今度はまた茶髪の男がベッドに上がってきた。
「…だ、大丈夫?」と、優しげに声を掛けて、俺の背中をさする。

「大丈夫?イツキくん…、ね…」

背中をさすって、とんとんとやって、俺の身体を気遣う風にしてながら




「ね、……こっち、いい?」


と、手を、俺のお尻に滑らせた。




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2009年04月18日

一応、お約束

「…こっち、いい?」

と、わざわざ聞かれて、断るつもりも無いんだけど
一応、お約束なので…

辺りのシーツをきゅっと掴んで、口元にあてて
頭を横に振りながら消え入るような声で
「…や、…だ…」とか言ってみる。

そう言っているのにも関わらず、茶髪は俺の身体を仰向けにひっくり返して、俺のズボンを下着ごとズリ下げた。
それから、自分も大慌てで服を脱いで、下半身を擦り合わせてくる。
そんな闇雲に突いても、女じゃあるまいし、つるんと入ることはないのに…
興奮した茶髪は、鼻息を荒くするばかりだった。

「……まって、それじゃ…、だめ」

俺は茶髪の肩を掴んで、少し本気を出して、身体を押し離した。
無理に挿入されても痛いだけだし、また、傷つけても…嫌だし。
そのまま肩に爪を食い込ませて、おねだりするように男を見つめる。
涙目になっていたのは、さっき咳き込んだ名残だと思うけど。

「…そのままじゃ、いや。俺、痛くなっちゃう…」
「…え…、じゃ…、ど…どうすれば、いい?」
「…なにか、つけて。…なにか…ぬるぬるしたの…。そうじゃないと…おちんちん…入らないよ…」
「…何か…って言っても…。……あっ」

茶髪はまた大慌てでベッドから下りると「確か、洗面所に、クリームが…っ」と叫んで部屋の奥に走っていく。
そしてまた大慌てで戻って来た時には、ホテルの備品らしい、白い乳液のビンを手に持っていた。

「これ?…これでいい?」
「……ん」

まあ、無いよりは全然マシなので。




ぴしゃぴしゃと股間に掛けられて、冷たさに一瞬、身体が震える。
それから茶髪の手がゆっくりと、それを伸ばし、あたりに塗りつけていく。
穴の回りを触る時は、少し、躊躇していたみたいだけど
意外に抵抗無く指先が入ると、まるで見知らぬオモチャを見つけたみたいに、何度も指を差し入れしていた。


やっぱり、お約束で「…やぁぁぁ…ん」とか言ってみる。

本当は早く、もっといっぱい、欲しいけど。



posted by 白黒ぼたん at 23:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2009年04月19日

丁度いい場所


「……ひ…あっっ」

偶然、茶髪の指が、俺の中の敏感な部分に触れて
つい、本当の声が出る。
逆らう気も無いけど…かと言って自分から腰を振る気もないけど…
でも、無意識に脚を広げて、腰を突き出してしまう。
もっと、もっと、もっと、欲しくて。

もっと。


マサヤなら、拳ごと中に突っ込んで、掻き回してくれるのに。


「…あっ…いい…、そこ…、あたる…の…」
「いい?いい?イツキくん…?気持いいんだ…? ああ、俺ももう、我慢できねーし…」

茶髪は余韻も残さずに、指をいきおい引き抜いて
その後にすぐ、自分のちんこの先を押し当てた。
くっと力を入れると、それは簡単に俺の中に入ってくる。
先端だけで焦らされたり、同時にちんこを弄られたり、そんな芸はないけれど
ただ若いだけの圧倒的な質量が、俺を満足させた。

「すげぇ…すげーよ。ずっぽり入ってるよ…はぁ…は…ぁ」
「…ん………、なか…、なか…が……」
「何?中が何?イツキくん……」

茶髪が少し角度を変えるだけで、中の奥に振動が伝わって、俺の身体はビクビクと震える。
いつの間にか俺は…
自分で、自分の両膝の裏を抱えるようにして持ち、淫らに腰を動かしていた。

「なか…が、いい…、の。…きもち…いい、の。もっと…もっと、して…っ」
「…イツキくんっっ……はぁ…っ…はぁっ……あ、いい、すごいよ、いいよっっ」

茶髪も俺の腰を掴んで、前後左右にと滅茶苦茶に腰を振り始める。
中の、丁度いい場所を突かれるたびに、俺のちんこからおしっこみたいに、精液が垂れた。


薄く開いた視界の端には


さっき射精したばかりのちんこを、また、弄り始めているロン毛と
やっぱり呆然とした顔で、それでも瞬きもせずこっちを見ている、眼鏡の姿が見えた。


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2009年04月22日

次は眼鏡の番

イツキが男達の部屋から出たのは、夜の9時を過ぎた頃だった。
痛みの残る腕をさすりながら、宿泊している旅館に向かう。



茶髪の男との行為が終わってシャワーを浴びていると、突然、後ろから抱き締められた。
頭から湯が掛かっているのにも構わずに、その男はイツキの首筋に貪りつくようにキスをして、手を、イツキの身体に這わせる。
自分の身体を押し付け、盛りの付いた犬のように動かす。感触で、すでに股間が剥き出しなのが解る。

傍観者だった眼鏡の男が、最後になって、欲望を抑えられなくなったらしい。

「…まって…、するなら…ちゃんと…する…から…」

こんな場所でこんな姿勢で、ろくな愛撫も無しに抱かれるのは嫌だと
イツキは小さな抵抗をするが、叶わず。
先刻のぬるみも借りて男のペニスは、簡単にイツキの中に納まってしまう。
イツキは壁に手を付いて身体を支えていたのだが、ずり落ち、床に倒れる。
その時にバスタブの縁に酷く腕をぶつけてしまったのだが…それでも眼鏡の男の動きは止まることは無かった。
「いい…いい…いいよ…っっ」
と、男は呻きながら乱暴に腰を振り、あっけないほど簡単に果ててしまう。

それでもしばらく、イツキの身体を抱き締めてものだから、思わず
「用が済んだら早く離せよ。バカ」
と、言ってしまった。


セックスなんて、別にもう、どうでもいい。と、イツキは思っていた。
今更、貞操を守る身体でもないし、守ったところで、踏みにじられるのが落ちだし。
それでも帰り道に歩きながら、涙が溢れてくるのは止めようが無かった。
自分は汚くて、情けなくて、惨めだと認めたく無くても、それ以外の事実は無かった。




「…ただいま」
「…イツキくん!…」

疲れきった表情で、旅館の部屋に戻るイツキを待っていたのは

リョーコの平手打ちだった。


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2009年04月25日

イツキとリョーコ

「こんなに遅くまでどこに行ってたのよ?何やってたのよ?心配したじゃないのっっ」
「…どこだっていいだろ。あんたに関係ないじゃないか」
「関係なくないわよ。一緒にいるんだから。……なんか…変な匂いがするわ…」
「……酒と…精液。…セックスしたからね」
「……なっっっ」

言葉につまるリョーコを尻目に、イツキは押し入れから布団を引き摺り下ろす。
ぶつけた腕を庇いながら、不恰好に、部屋の隅に布団を敷いた。

「腕、どうしたのよ?怪我したの?」
「関係ないだろ」
「喧嘩したの?酷い事されたの?」
「うるさいなぁ…」
「そんな言い方しなくてもいいじゃない。心配してるのよ?」

布団に潜り込んで、頭から毛布を掛けたイツキの傍に、リョーコが詰め寄る。
肩の辺りに手を当てながら、心配そうに中を伺う。
しばらくは無視を決め込んでいたのだが、身体を揺すったり、頭を撫ぜたり、毛布を剥がそうとしたり…
鬱陶しいほどに、リョーコはイツキにまとわり付いていた。

心配するのは、相手を思い気遣っている訳じゃない。
自分に、相手を心配する余裕があると、信じていたいだけなのだ。


「イツキくん。…ねえ、イツキくんってば!」
「…うるさいっ」

とうとう耐えかねて、イツキは声を荒げる。

「毎日、死のうとしてる女に心配される筋合いは無いよ。俺のことより、自分の心配でもしろよっ」



毛布の中からそう怒鳴って…、リョーコが、一瞬、息を止めたのが解った。


それから、性質の悪い事に


リョーコはシクシク、泣き始めた。


posted by 白黒ぼたん at 23:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2009年04月27日

イツキとリョーコA

いつの間にか何の話をしていたのか解らなくなってしまった。

シクシク泣き続けるリョーコを、しばらくは放っておいたのだが…それは一向に止む気配はなく
終いには声を上げて、本格的に喚き始める。
仕方なくイツキは布団から起きて、そこらにあったティッシュやらタオルをリョーコに手渡す。
何を泣いているのか解らないけど、これではまるで自分が悪いようで、どうにも落ち着かない。

「…泣くなよ」
「…だっ…て、イツキくん…イツキくん……」
「何だよ…」
「…駄目だよ。…もっと、自分、大事にしなくちゃ…」
「…それはあんただって一緒だろ。俺はまだ…死のうとなんて、してないし…」
「……うわぁぁ……っっ……んっ」
「だいたい、何で、死にたいわけ?そんな酷い事でもあったの?」
「…だって…、だって……、あの人…、もう…アタシの事、いらないって……」
「男に振られたの?…それだけ?」
「それだけ…って……、アタシには…全部だったんだもん……っっ」

リョーコはこみ上げる嗚咽を飲み込みながら、やっとそこまで話すと、また「わぁ…」と声を上げて泣く。
イツキはそんな姿を呆れて、少し、羨ましく思って眺めていた。


自分の気持ちに素直なリョーコが可愛い。
無くしたら死んでしまうほどの思いで誰かを愛しているリョーコが、とても強く思えた。


「馬鹿だなぁ。そんなの、あんたの全部じゃないよ。きっと、まだ他に…楽しいことも、幸せなことも…あるよ。多分…」

イツキは

…本当に、そうだったら良いんだけど…と、自分で思いながら

リョーコの涙と鼻水を、タオルで拭いてやった。
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2009年04月29日

イツキ、ご帰宅

部屋に帰ると

マサヤがいた。

リビングのソファで、煙草を吸いながら

酒を飲んで、テレビを見ていた。



リョーコさんとは次の日に別れた。
散々泣き喚いたリョーコさんは、何かふっ切れたみたいに元気になっていて
明るい顔で、俺に、偉そうに説教をしていた。

『イツキくんも、自分、大事にないと駄目だよー。イツキくんだって、大事な人がいるでしょ?イツキくんを大事な人だっているよ。絶対。多分。』

そんな言葉を信じるほど俺もお気軽じゃ無かったけど、ずっとこの旅館に泊まっている訳にもいかないし…逃げ回っている訳にもいかないし…

『連絡が付かないの?ケータイが繋がらないの? それね、お金払ってないだけだよ。ショップに行けば払えるよ』
『そう、なの?』
『そうだよー。そんな事も知らなかったの?おバカさんだねー』

毎日暗い顔で死に場所を探していた女にそう笑って言われて、少し、ムッとする。
それでも朝の日差しが入るテラスで、美味しい朝ごはんを食べながら話しをすると、それもそうだよな…なんて納得してしまう。

俺もたいがい、単純だけど。
時間と一緒に、色んなものを流して行くのは
悪い事じゃない。
そんな風に、考えて行かないと生きて行けない。
死なない以上、そうしていくしか無い。

駅のホームでリョーコさんとサヨナラをした。
最後に、ぎゅっと抱き締めあったのに、何の意味があったのかは解らないけど。




部屋に戻るとマサヤはチラリと俺を見て、また酒に手を伸ばした。
グラスを一気に空にすると、何も言わないまま、立ち上がって

寝室へと、向かった。



posted by 白黒ぼたん at 23:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記