2009年05月02日

痛みと、恐怖と

俺が寝室に入ると、マサヤはベッドの脇に立って、ゆっくりとネクタイを解いている所だった。
明りもついていない薄暗い部屋の中。機嫌が良いのか悪いのか、その表情すら見えない。

「…久しぶり…。マサヤ…。どうしたのかと思った。…全然、連絡、付かないから…」

パタンと後ろ手でドアを閉めて、恐る恐る声を掛ける。
マサヤはシャツのボタンを外して、チラと俺を見て「早く、来い」とだけ言った。
俺がベッドに近寄ると、その手を取って、優しく……とは、程遠く
髪の毛を掴んで、ベッドへと投げつけられる。
倒れ込んだ俺の腹の上にマサヤは跨って、引き千切るように、俺の服を剥いでいった。

まず、頬に平手が一発。
容赦ないマサヤのビンタは、それだけで頭がクラクラして、一瞬で、思考の全部を恐怖の底に叩き落とす。
マサヤが何に不機嫌なのか、思い当たるフシがありすぎて、何から謝って良いのか解らない。
謝ったところで、怒りが収まるとも思えないんだけど。

「…マサヤ…俺…」

口を開いたところで、また一発、殴られる。
それからマサヤは俺のカラダに指先を這わせて、引っ掛かる、胸の突起を爪で摘まんだ。
それは愛撫ではなくて、ただ、邪魔なものを摘み取るだけのようで
俺のカラダには痛みしか残らなくて、思わず、マサヤの手を止めようと、腕を払おうとすると

逆に腕を取られt、ベッドへと押し付けられる。

と、マサヤは…身体を屈めて、今度は俺の乳首に歯を当てて、ギリ…と噛み千切ろうとした。

「…ひっ……痛いっ…痛い、マサヤ…、痛い、痛いっっ」

身体を捩って、脚をバタつかせて、その暴力から逃げようとする。
顔を上げたマサヤの表情からは、何の感情も読み取れなくて、ただただ、怖い。

「…ご…、ごめんなさい。…マサヤ…俺…」

『ちゃんと待ってたんだよ。アンタが部屋に帰ってくるの、待ってたんだよ。
でも、その間に変なビデオ屋に捕まって…。アンタが俺の事、売ったって言うから…俺、解らなくなって…
それで、少し、ここを離れてただけなんだよ。

だって、だって、マサヤ…

連絡、くれないから。俺のこと、放っておくから…』



そう、ちゃんと弁明しようと思ったのに、出来なかった。


マサヤの手が、俺の首に巻きついていて
言葉どころか息すら、吐き出すことが出来なかった。






posted by 白黒ぼたん at 00:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2009年05月06日

片手で充分

昔の事を思い出していた。

昔と言ってもまだ、ほんの2、3年前。イツキが俺に抱かれるようになって間もない頃。
あいつはいつも怯えた目をして、身を硬くして俺の愛撫を受けていた。
キスの仕方も知らなくて、仕方なく、両側の頬を掴んで口を開けさせる。
絡めあう舌をすぐに引っ込めようとするから、指先で摘まんでやったら、それだけで泣きそうな顔になったっけ…。
そのまま舌の根元を摘まみながら、ちろちろと口の中をキスで犯す。
イツキは口の端から涎を垂らして、犬のように短い息を吐きながら、手のひらをぎゅっと握り締めて、シーツに押し付けていた。

服はわざと、冷たい鉄のハサミで切る。
ジャキジャキと布を裁つ音も、素肌にひやりと当たる鉄の感触も、あの頃のイツキには堪らないもので、
その切っ先でペニスを挟むと、笑えるほど勢いよく勃起させて、小便に似た透明な雫をぽたぽたと零したりしていた。
鈴口にハサミを捩じ込んで酷く出血させたのは、また別の日の事だったか…

ケダモノのように床に四つん這いにさせて、入り口をこじ開ける。
鮮やかに赤い肉壁がのぞく穴にビール瓶を底から突っ込むと、ヒィヒィと泣き叫んで、許しを請う。
経験したことの無い痛みと感触に身震いし、全身の神経を逆立てながら
その中から沸き上がる快楽を認めまいと、呼吸すら止めて、喘ぎを我慢していた表情を思い出す。

玩具にしては、上出来だった。




最近のイツキは少し、態度が悪い。
些細な痛みなら、すぐに快楽に変換させるし、簡単に善がる。
変に小慣れて横柄な素振りを見せたり、俺に対して、甘える仕草も見せる。
あいつは今までもこれからも、唇を噛み締めて目を潤ませながら、開いたケツの穴を晒していればいい。
あいつの行動一つで、俺の気を煩わせるなど…何様のつもりだ。


イツキを従わせるには、片手で充分。

俺の右手に掴まれたイツキの白い首筋が、ピクリと脈打った。

posted by 白黒ぼたん at 00:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

酒とキスと唾液とキス

「…ぐ……っ…」

首を絞められたイツキは、俺の手を掴んで、「苦しい」と目で訴える。
それでも一向に俺の手が緩まないと解ると、今度は足もバタつかせて、渾身の力で俺から逃げようとする。
それも気が済むと

白い顔をより白くさせて、目を見開いたまま、動かなくなってしまった。





一度イツキから離れ、リビングのテーブルに置いてあった酒のボトルを取りに行く。
その場で一口飲んで、またベッドに戻り、またそれを口に含んだ。
ベッドに上がり、身を屈め、気を失ったままのイツキにキスをする。
顎を掴み、薄く開かせた唇の隙間から、酒を流し込んだ。


二度三度と繰り返すと、イツキは目を覚まし、むせ返す。
意識のないところに飲まされたものだから、気管の変なところに入ったようだ。
涙をぽろぽろと零しながら、苦しそうに身を折り曲げて激しく咳き込む。
安物のマッカランだが度数は40以上ある。ストレートで飲むには少々きついだろう。
それでも、その顔を無理矢理上に向かせて、さらに口移しで酒を飲ませた。

「…や…、だ…、マサヤ…。…や…、…や……」
「口、開けろ。黙って、飲め」
「…マサヤ…、……マサヤ……」

ボトルの酒は半分以上、口の端から零れてシーツに吸い込まれていった。
やがて、酒が無くなると、後は互いの唾液を流しあい、舐め尽くしていった。





posted by 白黒ぼたん at 23:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2009年05月08日

汚い音と甘い声

ベッドの脇のチェストを開けて、いかがわしいオモチャを適当に選ぶ。
ゴツゴツとした突起のある、細長いアナル用のバイブは、イツキのお気に入りの物だ。
少し角度が付いているので、奥まで突き刺すと…変な場所に当たるらしい。
そのまま中で掻き回すと、いつも嫌、嫌、泣きわめいて、小便のように精液を垂れ流していた。
ローションはチューブごと中に刺して、丸々1本、流し込む。
栓をするように、すぐにバイブを挿れると、イツキはそれが何かすぐに解ったようで
いつものように腰を揺すって、「嫌、嫌…」と悦んでいた。


「…あ…ああん…、あ…んん…、嫌…、なんか…、きもち…悪い…い…、お腹の…とこ…、あたる…う…、ん…ん……」

スイッチを入れて振動させたそれを、小刻みに動かしてゆく。
腹に力が入ると時折、中のローションが汚い水音と共に飛び散った。
まるで、オナラの様な音に、イツキ自身も恥かしく思うようで

…今更、恥かしいもクソも無いと思うが…

唇を噛み締めて、顔を背け、ふるふると首を横に振ったりする。

「…いや…ぁぁ…ん…。そんなに…したら…、俺の…おしり…、ぐちょぐちょに…なっちゃう…。おもらし…しちゃう…、やだ…やだ…ぁ…」

ある程度酔いも回っているせいか、イツキはそう、言う。
助平ジジイどもを喜ばせる、営業用の言葉だ。
もちろん、そう言うように仕込んだのは俺なのだが…今はその甘ったるい声が、何故か鼻にさわって…



「……っや……、いやーーっっっっっ」

イツキの下腹にバイブの形が浮かびあがるくらい
強く、乱暴に、中を掻き回してやった。




posted by 白黒ぼたん at 00:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2009年05月09日

限界イツキ



勢い、バイブを引き抜いて、息を付く間も与えず
俺自身を突き刺す。
ローションを流したイツキの中は、正直、ぬるみ過ぎていて物足りない。
腰を上げさせ、太腿のあたりを思い切り平手打ちしてみると…多少、具合が良くなる。
脚や、腹や、胸を何度も打ち、ペニスに爪を立てて扱き、最後にはまた首に手を掛けて…奥に、射精した。

それでもまだ硬さの残るそれを、ずるりと引き抜くと
イツキの髪の毛を掴んで、身体を起こす。
イツキの顔を股間に押し付ける。それは何も言わなくても「舐めろ」という事なのだが
イツキははあはあと息を整えるのに忙しくて、なかなか口を開けない。
仕方が無いので、こめかみの辺りを一度殴ってから顎を掴んで、無理矢理こじ開けた口にペニスを押し込んでやった。


苦しいのは解っている。
上から押さえつけられれば、満足に息も出来ないだろう。
しばらく経つと、じたばたと身体を動かし、手で、俺の身体を押し退けようとした。

けれども、そうなっても…イツキは決して、咥えたものに歯を立てることはしない。
それをすれば今度は、本当に酷い仕打ちをされる事を、身を持って知っているからだ。




「…がっ……げふっっ……っっ…」

限界だったのだろうか、イツキは渾身の力で腕を突っ張り、俺の股間から顔を離した。
同時に激しく咳き込み、何度もえずき、おまけに



ケツから、ローションと俺の精液を垂れ流していた。







posted by 白黒ぼたん at 00:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2009年05月11日

逆上イツキ

「誰が、止めていいと言った? クソまで垂らしやがって…。イツキ、お前、ケツの穴が緩くなったんじゃないのか?」
「…はぁ…っ…はぁ……っ…、ぐっ…うう……、はぁっ……」
「あちこちでヤリ過ぎなんだよ。チンコなら何でも咥えるんだろう?節操のないケツだな…」
「……は…ぁ……は…ぁ……っっ」
「反論もしないか?そうだよな…、本当の事だもんな…。こんなに締まりが悪いなら、肉便器にしても最悪だな…」
「……ぁ……」
「………もう、役立たずか?……ゴミ箱にでも捨てるか?」

とりあえず…考えも無しに思いつく事を並べ立てた。
イツキは目に涙を浮かべて、まだ乱れる息を整えている。
シーツをきゅっと握り締め、カタカタと身体を小刻みに震わす姿が、


酷く似合う。



「…本当に…売れば良かったかな?あのビデオ屋に。…お前、アレ、大した格好だったな。あんな機械に掘られて善がってるようなら、もう、終いだよな…」
「……あ…」
「…あのテープ。もう出回ってるぜ?」



「…あんたが…、全部…、あんたが全部悪いんだろ!?」

突然イツキは顔を上げて、俺をキッと睨みながら大声でそう怒鳴った。
言った後は堰を切ったように、涙がぼろぼろ零れて落ちた。

「あんたのせいだよッ…俺が…こんな身体になったのも…、あ…あんなビデオ、撮られたのも…、あんたが…、あんたが悪いんじゃないかっっ」



今までしおらしく泣いていたかと思えば、逆上して、ブチ切れた。
その上…
やおら身体を起こしてベッドの端に手を伸ばすと



さっき、飲み干した酒のビンを手に取って、俺めがけて、振り回して来た。





posted by 白黒ぼたん at 00:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2009年05月12日

続きは、リビングのソファで


逆上したイツキの行動は予想外だったが、それで大人しく殴られるほど間抜けでもない。
振り下ろしたイツキの手から身体をそらすと、持っていた酒ビンはベッドのフレームに当たり
派手な音を立てて砕け散った。
それに一番驚いたのは当のイツキで、手に残ったビンの破片を持ったまま戸惑っている。
…まったく。それで俺を刺すぐらいの度胸が無いのなら、無駄な抵抗などしなければ良いのに。





ガラスの破片が散らかったベッドでやるのは、さすがに向かないので
続きは、リビングのソファで。
俺に逆らった罰に、また頬を2,3度殴って、まだ濡れている穴にペニスを突き刺した。
イツキの身体は半分ソファから落ちていたが、腰だけを掴んで、乱暴に揺する。
イツキは相変わらず「駄目」とか「イヤ」とか泣き叫んでいたが、その割には自分も動きを合わせて、俺と同時に、達した。


終わった時には2人ともソファの足もとに寝転がっていて、繋がった身体を離すこともなかった。
多少、息苦しかったが…唇も離さず、空気の代わりに唾液を交換しあった。
イツキは俺の名前と、何か言葉を呟いていたが、それは聞き取れず
それでも俺の背中に回した腕を解くこともなく、生意気にも時々、爪を立てた。



このまま、ずっと抱き締めていても良かったのだが




飽きた振りをして、イツキの身体を引き剥がすと
言葉もなにも掛けず

バスルームへと向かった。


posted by 白黒ぼたん at 21:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2009年05月14日

後片付け


マサヤはシャワーが終わったら戻ってくると思ったのに
そのまま身支度をして、部屋から出て行ってしまった。
勝手な奴。

俺はソファとテーブルの間の床に寝っ転がって、ティッシュさえも取れずに、しばらく…天井を見つめていた。

マサヤが俺をどうしたいのかなんて、解らない。
俺も。
割れたビール瓶の破片で、あいつの事を、滅茶苦茶に切り裂いてもいいのに
多分、出来ない。
それどころか、酷い行為の後に優しく抱き締めて欲しいだなんて、思っていることに…腹が立つ。

あいつは、俺を、道具か何かぐらいにしか、思ってないのに。



「…っくしゅっっ」

いい加減、身体が冷えて来たので、俺もバスルームに向かう。
熱いお湯に身体を浸すと、とりあえず、小さな幸せを感じる。
ベッドルームの掃除は、正直大変だった。
まったく。誰がこんなに散らかしたんだろうって、鼻で笑った。

キレイに糊の利いたシーツを張って、やっと布団に潜り込んだ時には、もう、窓の外が白み始めていた。
俺は目を閉じると同時に、深い眠りへと落ちていく。
すごく、疲れていた。

もう少しだけ…意識が…はっきりしていたら…気が付いたかも知れない。




バスタブに、熱いお湯を入れてくれたのが…誰だったかって。


posted by 白黒ぼたん at 01:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2009年05月15日

佐野っちとラーメン屋


カーテンの隙間から入る日差しで目が覚める。
この日の傾きは、もう、昼過ぎかも知れない。
枕元に置いてあったケータイを取って、一通りメールをチェックしてから
俺はもそもそ、ベッドから抜け出して、熱いシャワーを浴びる。

濡れた頭にバスタオルだけ掛けて、冷蔵庫を覗き込む。
食べるものは何も入っていないし、飲み物も…水とビールだけで
どっちにしようか少し迷って、ミネラルウォーターのボトルを取る。
ビールは…夕べ…飲みすぎちゃったから。

リビングのソファに座って、テレビを見ていたら、佐野っちから電話があった。
近くまで来ているから、一緒にメシでも食おうって。
俺は急いで着替えて、部屋を出る。
マンションの下には、もう佐野っちの、黄色いスカイラインが止まっていた。



「なんかさー、社長とイツキ…揉めてそーだから…心配してたんだぜ?」
「揉めてなんかないよ。放っておかれただけだよ」
「ああ、あれな。聞いた?社長、留置所に一週間いたらしいぜ? 西崎のオヤジさんも大忙しでよ。今回はそれくらいで済んだみたいだけど…」
「……ふぅん」

行きつけのラーメン屋で味噌ラーメンをすすりながら、ここしばらくの近状報告をする。
マサヤは表向きは「社長」だけど、取り扱う品は正規のルートから外れた物や土地や、人だったり。
はっきりと「暴力団」と名乗っている西崎を部下に置き、その西崎以上にあざとい仕事をしていた。
ただのヤクザじゃん…と思うけど、その実、本当のところはどうなのか…俺にも解らないでいた。


そのヤクザに頭を下げて、金を工面して貰って、借金まみれの家を助けて貰った俺もどうかと思うけど。


二千万とも三千万ともつかない金額のために、俺はマサヤの扱う、商品の一つになったんだけど。



「…キ、なあ、イツキ?」
「…あ、うん?何、佐野っち」
「この後さ、どっか行こうぜ。遊びに行って…俺んち、来いよ」
「佐野っちん家には…みさ子ちゃん、いるじゃん」
「バカ。俺、もう、もさ子とは別れたんだって!」
「…ふぅん」

やけにムキになる佐野っちを見ながら、最後の一枚のチャーシューを食べる。
佐野っちは、好き。
俺も、佐野っちの彼女だったら良かったのに。

「俺、これから仕事なんだ。6時に新宿。佐野っち、送ってよ」
「…あ、そ…、そう…、なんだ…」


「仕事」と言われたら、佐野っちもそれ以上、何も言うことは出来なかった。
それからは通夜の席みたく静かに、残りのラーメンの汁をズルズルとすすった。












posted by 白黒ぼたん at 23:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2009年05月18日

職場復帰

指定されたホテルは格別に良いランクでは無かったけれど、それでも最上階のスイートルームともなれば話は別で
エレベーターを降りて、そのフロアに入った時から、違う空気が流れた。
いやに毛足の長い絨毯は、ふかふか過ぎて足が引っ掛かるし
無造作に置かれた壷とか、絶対に近寄ってはいけない雰囲気を持っていた。

ああ…俺、こんな場所に…

ラーメン食べてから、来るんじゃなかった。

なんて、暢気に考えていた。



「仕事」をするのは久しぶりだった。
去年、高校生をやっていた時には、それでも3日に一度は呼び出されていたのに。
その回数が減って、代わりに、マサヤが毎日のように部屋に来ていたのは…どうしてだったっけ。
学校でレイプされたからだっけ?同じクラスのユータと、セックスしたからだっけ?
学校はそれなりに楽しかったけれど、俺が何かに楽しいのは、マサヤは気に入らないらしい。

朝も夜もなく、俺の身体を独占したかと思えば、干からびるほど放置して
それでいてまた、他の男に抱かせるんだから…

もう、訳わかんないよ。




「よく来たな、イツキ。久しぶりじゃねぇか。なんだ、少し、背、伸びたか?」

部屋に入ると、前にも何度か相手をしたことのある男が、上機嫌で俺を迎え入れた。
気安く肩を抱いて、親しげに髪を触る。
そのままソファに座らされて、目の前のグラスに酒を注がれる。
いきなり、ブランデーのストレートはキツ過ぎるけど、俺にそれを断る権利は無い。

「まったく。黒川の奴、出し惜しみしやがってよ…、…会いたかったんだぜ?イツキ…」

隣に座った男はそう言って俺の膝をぽんぽんと叩きながら、その手を…つつ、と上に滑らせていく。
それくらいの事で表情を変えるつもりはないけど、男がそれを待っているので、とりあえず嫌そうな振りをする。
指先が少し、脚の中心に触れて、虫唾が走った。

「お前も俺に会いたかったよな?なあ?…俺のチンポ、咥えたかっただろう?……そう言えよ、イツキ」

男は手に強弱を付けながら、上目遣いで俺の表情を探る。
俺は精一杯恥らいながら、その返事を、蚊の鳴くような声で呟く。

声が掠れて、震えていたのは

男を喜ばせるための演技で

久しぶりの仕事に緊張したから…じゃ…ないと…思う。







posted by 白黒ぼたん at 01:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記