2026年06月02日

ユウ








ユウも、可哀想な子、だった。
実家が抱えた多額の負債の為に黒川の元に預けられ
出来る仕事といえば、まあ、そう言った事しかなく。
それでも器量が良く、素直で従順。普通に行けばトップクラスだったろうに
どこかイツキに雰囲気が似ていたために、どうあっても代替品と呼ばれてしまう。

せめて黒川に頼り、必要とされる事で、自分の存在意義を見つけようとしていたのだが
それも否定されるように、外へと放り出されてしまった。



酷い仕事をさせる訳でもない。いわば金持ちの年寄りの愛人、といった話で
条件も報酬も、今の仕事より格段に良いものだ。

けれどユウには、それは、
自分を遠くにやってしまいたいとの策略なのだと解っている。
どうしたところで、黒川は自分を、必要とは思ってくれない。
肝心なところで、イツキの代替品にはなれないのだ。




黒川の元を離れる最後の夜に泣いて縋ってみたけれど、黒川は
「お前にとっても、良い話だろ」と愛撫の手を止めずに、温度の無い視線を向ける。

「それでもマサヤさんの傍にいたいのに」
「…わがまま言うなよ。頼むよ、ユウ」

甘い言葉と爛れた快楽が判断力を削って行く。
それがこの男のやり方なのだと、解っていても流されて行くしかない。




まあ、世の中とはこんなものなのだと

ユウが全てを諦め受け入れるのには、もう少し時間が掛かるようだった。






posted by 白黒ぼたん at 00:45 | TrackBack(0) | 日記