2023年11月21日
三つ巴
ハーバルでの仕事を終え、横山を帰し、店を締める。
さすがに本社からの無茶振りはキツかったが、イツキにはまだ一仕事残っていた。
小さくため息をついて、少し歩く。
向かった先は、カフェみうら、だった。
「…ああ、おつかれさま。イツキてんちょ…」
「…おつかれさまです…」
店は、営業はしていないものの明かりが付き、珈琲の良い匂いが漂っていた。
エプロンを掛けた三浦がカウンターの中に立ち、
そして、奥のテーブル席には……松田が座っていた。
イツキは三浦に軽く頭を下げ、そのままテーブル席に向かう。
松田は少し不機嫌な顔をしていたが、イツキを見ると、優しくニコリと笑った。
「おつかれ。イツキちゃん。……まあ、だいたいの話は解ったよ。災難だったね」
「いえ。別に。大丈夫です」
「俺がキッチリ締めるよ。預かってる俺の責任だ」
「いえ、本当に。もう済んだ話なので。何もしないで良いです、松田さん」
カチャカチャと音を立てて、三浦がテーブルにコーヒーを置いた。
松田はそれを、解りやすく怖い顔で、睨む。
……イツキが来る前に、尋問と説教は一通り済ませたようだ。
コーヒーを入れる手が不調法なのは、片腕を骨折しているためだった。
「三浦さん、腕、平気?」
「ああ、もう。そんな、全然」
「三浦さんはね、俺のこと、ちゃんと守ってくれたんだよ」
イツキはコーヒーカップを持ちながら、松田にそう言って、微笑む。
そんな事で、あの一件がチャラになるとは到底思えないのだが
意外と、イツキには重要なことだったようだ。
posted by 白黒ぼたん at 22:40
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